M&A

近年の愛知県でのM&A、会社売却、事業譲渡の事例紹介

本記事では、近年の愛知県におけるIT企業、ITサービスのM&A、事業譲渡の事例を5つ紹介します。

1. 株式会社エイチーム(Ateam Inc.)によるIncrement株式会社の買収

2017年12月、愛知県名古屋市に本社を置く株式会社エイチーム(Ateam Inc.)は、東京都港区に本社を構えるIncrement株式会社の株式の100%を取得し、同社を子会社化しましました。

親会社のエイチームは、インターネットやスマートフォン・タブレット端末を通じて、利用者に対してライフスタイルサポート事業、エンターテインメント事業などの事業を展開する総合IT企業です。

子会社となったIncrement株式会社は、プログラマ向けWebサービス「Qiita」を企画・開発・運営する会社です。以下、エイチームによる株式取得(子会社化)の目的です。(株式会社エイチーム「Increment株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」(2017年12月22日)より引用)

『エイチームの目指す姿』につなげるべく、資本を活用した中長期的成長の実現ならびに企業価値の向上を加速させるため、「既存事業の競争力強化につながると想定される企業や事業」及び「自社で容易に参入できない、 或いは参入に時間のかかる事業を持つ企業」の買収を積極的に手掛けていくことを検討してまいりました。 Increments社は、「自社で容易に参入できない、或いは参入に時間のかかる事業を持つ企業」に該当し、当該 株式を100%取得することで、そのアセットやノウハウの活用により、新たな事業展開を加速させることが出来、 当社グループの中長期的な成長及び企業価値の向上につながると確信したため、本株式取得を決議いたしました。

エイチームは同お知らせ内において、買収後の事業戦略として、両社のエンジニア間の知識・スキルの融合、新規事業の創出による事業領域の拡大をし、経営基盤の一層の強化を図っていくと述べています。

2. コムシスホールディングスによるNDS株式会社の買収

2018年10月、東京都品川区に本社を置くコムシスホールディングスは、愛知県名古屋市に本社を構えるNDS株式会社を株式交換により買収しました。

親会社となったコムシスホールディングスは様々な技術やサービスを駆使して顧客の要望に合わせたICTソリューションを提供する事業を持つ会社で、高速ネットワークの提供などを手掛けています。

子会社となったNDS株式会社もICTソリューション事業を抱える会社で、システム開発やデジタルサイネージ、電子マネー決済システムなどのICTソリューションサービスを展開しています。

コムシスホールディングス株式会社は「コムシスホールディングス株式会社とN D S株式会社の経営統合に関する株式交換契約締結のお知らせ」(2018年5月8日)の中で、「本株式交換による経営統合の目的」として、以下のように述べています。

CHDグループ(注:コムシスホールディングス株式会社)及びNDSグループは、両社グループが持つ技術力を相互補完することで、通信、 電気、ガス、水道などのインフラ設備建設のサービスラインナップの拡充や、両社グループが安定的 かつ継続的に発展するための人材交流、施工・安全品質マネジメントノウハウ及びITプラットフォームの共有・活用による効率化など、CHDグループ及びNDSグループの強みを活かして広範囲に わたって事業展開することでシナジーの最大化を追求し、グループとしての成長戦略を強力に推進することによって企業価値の一層の向上を図ってまいります。

コムシスホールディングスは他にも金沢市に本社を置く北陸電話工事、九州地方が地盤のSYSKENも傘下に収めており、営業エリアを広げることで収益拡大を狙うと見られています。

コムシスホールディングスと傘下に入った3社は、NTTグループの通信設備の工事で協力しています。今後、次世代通信規格「5G」など高度な技術を必要とする設備工事の増加が見込まれていますが、通信工事全体でみると減少しており、経営統合で民間の一般工事をさらに取り込むことが狙いのようです。

3. デンソーによる東北パイオニアEG(株)の買収

2018年12月、愛知県刈谷市に本社を置く株式会社デンソーは、山形県天童市に本社を構える東北パイオニアEG(株)を買収しました。

買収を行ったデンソーは、先進的な自動車技術・システム・製品を提供するグローバル自動車部品メーカーです。株式譲渡を行った東北パイオニアEG(株)はファクトリー・オートメーション(FA)事業を手掛ける企業であり、各種自動化生産設備のシステムインテグレーターとして、自動車関連メーカー、電気・電子機器、医療、食品、半導体、ITなど、さまざまな産業に向けて、顧客ニーズに応じた高度なオーダーメイドのFA生産システムを提供していました。

この株式取得についてデンソーは、
デンソー、東北パイオニアEG株式会社の株式を取得」(2018年9月7日)の中で、東北パイオニアEG(株)は20年来のビジネスパートナーであり、長年に渡って取引をしてきたとした上で、「今回のデンソーの株式取得によりさらに緊密に協業することにより、無駄を徹底的に省いた最適なFAシステムをソリューションとして、より広く、より早く、社会に提案・提供し、モノづくり産業の発展に幅広く貢献していきます。

とコメントしています。この株式取得により、東北パイオニアE G(株)は同年12月より(株)デンソーF A山形へと社名を変更しています。

4. シェアリングテクノロジー株式会社による複数企業のM&A

シェアリングテクノロジー株式会社は、愛知県名古屋市に本社を置くITベンチャー企業であり、日本最大級のライフサービスプラットフォームを展開している企業です。

この会社は、M&Aにまつわる情報を提供するメディア「M&A Online」にて、2018年の買収件数1位の企業として紹介されました。その数なんと、1年間で9件。ここではその全てを紹介します。

(1) 株式会社APEXYの買収

株式会社APEXYは東京都北区に本社を構えていた企業です。サービスとして、お金にまつわる知識や役立つ情報を発信・掲載するサイト「お金つくーる」を運営していました。現在ではシェアリングテクノロジー株式会社に買収されており、「お金つくーる」は「マネスク お金の学校」とサイト名を改めて運営されています。

(2) Discover株式会社の買収

Discover株式会社は東京都渋谷区に本社を置く会社で、Webメディアの運営などを手がけています。2018年にはシェアリングテクノロジーがDiscoverの株式を取得し、子会社化しました。

(3) 株式会社名泗コンサルタントの買収

株式会社名泗コンサルタントは、三重県四日市市に本社を構えている企業で、不動産全般を広く取り扱っています。2018年にシェアリングテクノロジーが株式を取得し、子会社化しました。

(4) 塩谷硝子株式会社の買収

塩谷硝子株式会社は愛知県春日井市に本社を構える企業で、硝子製品の製造・販売をしています。2018年にシェアリングテクノロジーが完全子会社化を行いました。なお、2020年に入ってからは塩谷硝子はシェアリングテクノロジーを存続会社として簡易吸収合併されており、同会社の特定子会社には該当しないことになっています。

(5) 電子プリント工業株式会社の買収・売却

電子プリント工業は兵庫県尼崎市に本社を構える会社で、電子回路の設計およびプリント配線版の製造・販売を主な事業としています。

2018年春、シェアリングテクノロジーは約6億5000万円を投じて電子プリント工業を買収しました。なお、2020年の5月に入ってからは、シェアリングテクノロジーは、電子プリント工業社長に同会社の全株式を譲渡しており、これは実質的な企業売却にあたります。

(6) 株式会社リアブロードの買収・売却

株式会社リアブロード(Re-abroad INC)は東京都新宿区に本社を構える会社で、海外留学サービス「スマ留」を運営しています。

2018年、シェアリングテクノロジーはリアブロードの株式を取得し、子会社化しました。なお、2020年に入ってからシェアリングテクノロジーは、リアブロード社長に全株式を譲渡しており、実質的に企業を売却しています。

(7) 内装工事見積もりサイト「アーキクラウド」の事業取得

内装工事見積もりサイト「アーキクラウド」は、東京都渋谷区に本社を構える株式会社アーキバンクが運営していたWebサイトです。
2018年にシェアリングテクノロジーが事業取得を行いました。

(8) iPhone修理店舗ポータルサイト「iPhone救急車」の事業取得

iPhone修理店舗ポータルサイト「iPhone救急車」は、東京都新宿区に本社を構える株式会社Gogashaが運営していたWebサイトです。
2018年にシェアリングテクノロジーが事業取得を行いました。

(9) 引っ越し見積もり料金検索サイト「引っ越しチェキ!」の事業取得

引っ越し見積もり料金検索サイト「引っ越しチェキ!」は、有限会社モノクリエイト(2015年〜岐阜県岐阜市、2018年〜東京都目黒区、2020年〜東京都世田谷区)が運営していたWebサイトです。
2018年にシェアリングテクノロジーが事業取得を行いました。

5. 弥生株式会社による株式会社Misocaの買収

2016年2月、東京都千代田区に本社を置く弥生株式会社は、愛知県名古屋市に本社を構える株式会社Misocaの全株式を取得し、同社を子会社化しました。弥生は会計ソフト「弥生会計」を、Misocaはクラウド請求管理サービス「Misoca」を開発・運営する企業です。

この子会社化について、株式会社Misocaは、「当社と弥生とは2014年からサービス上のデータ連携を開始しました。」と説明し、「急速に拡大しているFinTechの市場競争においてはスピードとチームの力が重要になります。」とおいた上で、「今後は、両者で、スモールビジネスの業務効率化をさらに推進するサービスの開発、事業成長を支援するFinTechサービスの開発を進めていく予定です。」と述べています。

両社の将来の事業構想は「中小事業者向けEDI」にあります。EDIとはElectronic Data Interchangeの略で、受発注や契約など事業者間の取引に必要なやりとりを電子プラットフォーム上で行う仕組みのことです。しかし、かかる仕組みは現在は大企業でしか普及していません。

そこで両社は大企業しか利用できていないEDIの仕組みを中小企業も使える一般的なものにしたいという思いからM&Aに至りました。

以上、愛知のM&A、会社売却、事業譲渡の事例を紹介しました。ぜひ参考にしてください。

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