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約2.8兆円でSlackを買収したセールスフォースの狙いとは? 巨額M&Aの事例

2020年12月にセールスフォースはSlackを約2.8兆円で買収しました。どちらかのサービスを利用している人にとっては、買収の事実だけでなく、金額にも驚いたでしょう。なぜ約2.8兆円も動くM&Aが実現したのでしょうか。

今回の買収のニュースに興味がある人のために、セールスフォースがSlackを買収した社会的背景を紹介します。
また補足情報として、他のIT企業による巨額買収における他の例も挙げ、その理由も解説するので、ぜひ最後まで読んでください。

1. セールスフォースがSlackを約2.8兆円で買収

2020年12月にセールスフォースはSlackを約2.8兆円で買収しました。3兆円近くものお金は、世界的な企業でないと一度に動かせないので、買収規模に衝撃を受けた人も多いでしょう。セールスフォースとSlackのそれぞれの概要と、買収の詳細をまとめます。

(1) セールスフォースの概要

セールスフォースは、企業が顧客の適正に管理するためのソフトウェアを提供しています。サービスに限らずマーケティング、営業などあらゆる部署で、ひとりひとりの顧客の情報を共有できるプラットフォームが特徴です。

企業はセールスフォースを利用すれば、自社の商品をどのような顧客が欲しがっているかを把握できます。それだけでなく、複数の部署で顧客に関する情報を共有し、役割分担が可能です。それぞれの部署が手に入れた情報を持ちより、会議をする手間が省けるメリットがあります。

このようにセールスフォースは、最適化した顧客の情報管理という方法を提供することで、企業の仕事を効率良くしているのです。

(2) Slackの概要

Slackはメッセージプラットフォームであり、主にインターネット上での仕事のコミュニケーションに役立ちます。Slackにアクセスできれば、自宅にいても勤務先の上司や同僚と必要なコミュニケーションを取れるのです。

Slackでは特定のチャンネル内で参加者がメッセージを送ったり、参加者同士でファイルを共有したりできます。プライバシーを守りながらも、仕事で大切な情報を必要な人だけに伝えられるので、パソコンやスマートフォンさえあれば最低限の情報共有が可能です。

他にも音声やビデオ通話ができるほか、既存のサービスやツールをSlackのワークスペースに連携させるなど、柔軟なコミュニケーションがとれます。以上からSlackも、インターネットを使った仕事で大いに役立つでしょう。

(3) 買収はどのように決まったのか

2020年12月1日に、Slackはプレスリリースでセールスフォースからの買収を受けたことを発表しました。その金額は約2.8兆円になります。

さらに今回の買収による契約条件から、Slackの株主は同社の1株につき26.79ドルの現金に加え、セールスフォースからも0.0776株の普通株を手に入れています。

この買収は、Microsoftの目玉プラットフォームである「Teams」への対抗を見据えたものとされています。さらにSlackはセールスフォースの主力製品である「Customer 360」の開発に大きく関わるため、買収による関係強化を図ったともいえるでしょう。

いずれにしても、セールスフォースの買収劇は世界中を驚かせたのではないでしょうか。

2. セールスフォースがSlackを買収した背景とは?

セールスフォースによるSlackの買収は、以前からの提携関係やリモートワークの隆盛、Microsoftへの対抗心などさまざまな要因が背景に挙がります。この章では買収の背景について、4つのポイントを見ていきましょう。

(1) M&A前からセールスフォースとSlackは提携関係だった

セールスフォースとSlackは、M&Aが決まる前から提携関係がありました。2つの会社は、2016年から提携が始まっており、2019年から関係を強化してきています。

特に2019年には、Slackからセールスフォースのアプリが利用できるようになりました。セールスフォース側で管理者がSlackパッケージをインストールし、適切な設定を行うことで使えるしくみです。
このようにセールスフォースは、買収前からSlackとの関係が良好だったことが分かるでしょう。

(2) 新型コロナウイルスでSlackのようなリモートワークツールが注目

2020年の新型コロナウイルス感染拡大により、Slackのようなリモートワークツールが注目されています。会社に多くの人が集まることによる感染者の発生リスクを避けるため、このような動きが盛んになりました。

Slackはメッセージやファイルなどを共有するツールなので、リモートワークには理想的です。一方でセールスフォースも顧客の情報を共有するツールを提供しています。Slackとの組み合わせでリモートワークをしながら顧客を満足させられるシステムを作れるでしょう。

セールスフォースとSlackの相性の良さは、DX(デジタルトランスフォーメーション)化にも効果的です。DX化は仕事のデジタル化により、企業だけでなく顧客にとっても要求を満たしやすいというメリットがもたらされることを意味します。

セールスフォースにとっては、DX化の流れに乗る意味でも、リモートワークツールのSlackの買収が必要だったのでしょう。

(3) Slackは人気上昇中も赤字続きだった

Slackはリモートワークにふさわしいツールとして、世界的に人気が上がっていますが、業績としては赤字続きでした。2020年も売上を伸ばしていながら、決算のたびに赤字が積み重なる状況が続いています。

これは製品の原価、研究開発費用、セールス・マーケティング費用、サービスの管理費などによる総コストが大きく、売上高を超えているからです。この状況が続くと、いくら人気でも長くはもたないでしょう。

しかしセールスフォースによる買収で、Slackの経営状況も変わりそうです。買収を受けて話題になれば世界中でSlack利用者の数が増え、利益が入る可能性があります。Slackにとっては、セールスフォースの買収で将来性が高まったでしょう。

(4) セールスフォースはMicrosoftへの対抗を目指している

セールスフォースは今回の買収で、Microsoftへの対抗を目指しているとされます。

Microsoftには顧客管理ツール「Dynamics 365」に加え、ビデオ会議やファイル共有などの機能がある「Teams」も話題です。Dynamics 365はセールスフォースのCustomer 360にとっての競合品になります。TeamsはSlackにとってのライバルでしょう。

セールスフォースとSlackがM&Aにより提携を強化し、顧客管理や情報共有のノウハウをともにすれば、Microsoftにない独自のサービスで人気を得られそうです。

3. セールスフォースとSlackの買収で何が起きるのか

セールスフォースはSlackを買収したことにより、主力製品であるCustomer 360の発展を期待できるでしょう。他にも国境を超えたリモートワークを生かし、顧客の満足度を上げる企業が出そうです。今回の買収で考えられるメリットをまとめました。

(1) セールスフォース製品「Customer 360」の発展

セールスフォースにはCustomer 360という主力製品があります。Slackを買収したことにより、主力製品の強化が見込めるでしょう。

SlackはCustomer 360の新しいインターフェイスとしての活躍を期待されています。Slackはセールスフォースのアプリが使用可能です。Customer 360との関わりを深めることで、セールスフォースのアプリを使って顧客情報を手早くチェックするような利便化が望めるでしょう。

以上からCustomer 360の発展という意味で、Slackが買収を受けたことは有意義です。

(2) 国境を超えたリモートワークで成長する企業が出るか

セールスフォースによるSlackの買収は、国境を超えたリモートワークの浸透につながるでしょう。セールスフォースのシステムによる顧客情報を、別々の国の人同士が共有する可能性があるからです。

たとえばSlackを使えば、ユーザーは別の国にいる人ともコミュニケーションを取れます。セールスフォースのアプリをSlack内で使い、顧客情報を共有できる体制があれば、別の国にいる人と製品を売るための最適な方法をやり取りできるでしょう。

Slackのおかげで、さまざまな国からのリモートワークで活動する企業が活動できるでしょう。さらにセールスフォースのアプリで顧客情報を共有できれば、リモートを駆使して成長する企業が生まれる可能性もあります。

4. セールスフォースだけでない2020年のIT企業の巨額買収例

2020年はセールスフォースだけでなく、フェイスブックやAmazonなど、IT企業による巨額の買収が続出しています。IT業界のトレンドになりつつあるM&Aの例を2つ挙げました。

(1) FacebookのGIPHYとKustomerの買収

Facebookは5月15日にGIFアニメコミュニティのGIPHYを約428億円で、12月7日にはKustomerを約1040億円で買収しています。

GIPHYは、ショートアニメや動画の投稿サービスである「GIF」をメインとした企業で、ニューヨークを拠点にしています。

Kustomerはeコマース向けのチャットbotを提供する企業です。顧客の履歴に合わせてマニュアル化されたメッセージでコミュニケーションを取り、効率的なサービス提供を目的としています。

買収を受けたGIPHYは、Facebook傘下のInstagramに統合される見通しです。Kustomerはカスタマーサービスのノウハウ向上のために買収を受けたとされています。いずれにしても躍進を続けるFacebookに今後も注目しましょう。

(2) Amazonは自動運転事業強化のためZooxを買収

Amazonは6月24日にZooxを約1070億円で買収しました。Zooxは2014年創業で、自動運転技術を開発する企業です。今回の買収によりAmazonは自動運転ビジネスの強化を図るとしています。

Amazonはこれまで自動運転のプロジェクトに独自で取り組んでおり、配送ロボットを開発したり、自動運転貨物車を製造するEmbarkのトラックのテストに関わったりしています。Zooxの買収により、自動運転業界でも本格的に勢力を作る狙いでしょう。

5. IT企業のM&A続出はDX化が背景

近年のIT企業によるM&Aが増えた背景には、DX化の推進が挙がります。日本でも労働現場のデジタル化から顧客のサービス満足度を上げるDX化の課題が目立つ中、IT企業によるM&Aが活発化している状況です。

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大による自粛期間がありましたが、世界中でIT企業によるM&Aが目立ちました。日本でもIT企業によるM&Aは、2018年から3年連続で最多更新です。

コロナ禍により世界中でリモートワークやDX化が推進される中で、IT企業の活躍が社会的にカギを握ります。

6. まとめ

セールスフォースのSlack買収は、金額の大きさから世界中を驚かせました。顧客情報共有システムを売りとするセールスフォースと、リモートワークでのコミュニケーションを助けるSlackが手を組むことで、世界中の働く現場に大きな影響を与えるでしょう。

以上に限らず、世界的にはDX化の流れに寄り添うように、IT企業によるM&Aが活発化しています。その中でセールスフォースとSlackも、人々の生活を変える活躍を期待できるでしょう。

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